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カリ・ヴティライネン 独立時計師界の巨星が過小評価されていたデンマークの時計メーカー復活に全身全霊を捧げる理由

フィンランドを出自とするこの時計職人は、秘石ともいうべきブランドの未来を描くため、過去の経験を最大限に活用している。

カリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)は独立時計師界隈で最も忙しい男かもしれない。

フィンランドで生まれ、長らくスイスのモティエを拠点としてきた彼はこれまでに8つのGPHG賞を受賞し、自社製ムーブメント(マニュファクチュール)に加え、時計界で最も需要の高いダイヤル専業メーカーを所有・経営している。彼はまた、大小さまざまな時計メーカーとのクリエイティブなコラボレーションにも長けており、ときには大成功に導くこともある。

しかし、彼のキャリアの初期にあたる1990年代半ばに仕事を請け負っていたウルバン・ヤーゲンセン社を買収するという千載一遇のチャンスが彼の足元に舞い込んできたとき、彼はその話に乗ることに抗えなかった。数週間にわたる噂やソーシャルメディア上の情報の錯綜を経て、2021年11月下旬、ヴティライネンが投資家グループを率い、かつてのデンマークのオーナー一族からウルバン・ヤーゲンセンを買収し、自らが新CEOに就任したというニュースが世界中を駆け巡った。

ウルバン・ヤーゲンセンは、前オーナーのピーター・ボームベルガー(Peter Baumberger)氏と時計師デレク・プラット(Derek Pratt)氏の尽力により、現代の独立系時計メーカーのパイオニアとして認められている。2010年にボームベルガー氏が亡くなって以降、ここ2年間で独立系時計メーカーに対する関心がかつてないほど高まったにもかかわらず、ウルバン・ヤーゲンセンはマーケット上での一貫したリーダーシップを発揮できず、コレクターのあいだで人気が低迷していた。

1996年にパルミジャーニ・フルリエで修理の仕事をしていたとき、初めてボームベルガー氏の目に留まったヴティライネン氏は、まさに新世代をリードするのにふさわしい人物だった。ウルバン・ヤーゲンセンとの関係、北欧時計文化への想い、ビジネス哲学、そして今後の展望を語ってもらった。


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